ステンレス製品のTIG溶接修理|折れた取っ手を持ち込み補修

今回は、ステンレス製の取っ手をTIG溶接で修理した事例をご紹介します。
お客様が現物を直接持ち込まれ、
「取っ手部分が折れてしまったので、溶接で直せませんか?」
とご相談いただきました。
形状としては引き戸などに使われる取っ手に近く、手のひらほどの大きさです。
確認すると、曲げ加工されたプレートの根元部分でステンレス母材そのものが完全に破断していました。
今回はお客様がその場で待たれていたため、破損状態を確認し、対応可能と判断したうえでTIG溶接による補修を行いました。
今回のステンレス溶接修理の内容
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品 | ステンレス製取っ手 |
| 数量 | 1個 |
| 大きさ | 手のひら程度 |
| 材質 | ステンレス |
| 詳細鋼種 | 不明 |
| 破損箇所 | 曲げプレートの根元 |
| 状態 | 母材が完全に破断 |
| 修理方法 | TIG溶接 |
| 溶接機 | Panasonic TIG WP300(機械本体表記) |
| シールドガス | アルゴン100% |
| 溶加棒 | SUS308系 |
| タングステン | セリウム入りタングステン・径不明 |
| 主な注意点 | 位置・角度・接合部の溶融状態 |
| 仕上げ加工 | なし |
| 強度試験 | 実施なし |
| 最終確認 | 位置・角度・グラつき・固定状態 |
| 対応 | 今回事例では持ち込み後その場で施工 |
曲げプレートの根元で完全に破断
まずは持ち込まれた製品の状態を確認します。
今回壊れていたのは、取っ手に付いている曲げプレートの根元部分です。
元の溶接部だけが剥がれたのではなく、ステンレスの母材そのものが折れて完全に分離していました。
破損した原因については確認できていません。
そのため、
経年劣化が原因
強度不足が原因
などと推測して判断することはせず、今回は目の前にある破損状態を確認して補修方法を検討しました。
持ち込み修理では図面や材質詳細がない場合もあります
今回のような既製品の修理では、新規製作品のような詳細図面や材料表がないことがあります。
今回もステンレス製であることは分かっていますが、SUS304などの詳細な鋼種までは確認できていません。
ただし、材質の詳細が分からないからといって、必ず修理できないというわけでもありません。
まずは、
- 製品の状態
- 破損箇所
- 母材の厚みや形状
- 元の取付位置
- 使用方法
など、確認できる範囲から対応可能か判断します。
一方で、材質や使用条件によっては溶接修理をおすすめできない場合もあります。
構造上、グラインダーが入らない部分でした
通常、補修溶接では破損部周辺の状態を確認し、必要に応じてグラインダーなどで表面を整えてから施工します。
しかし、今回の製品は形状的に破断部分へグラインダーを十分に入れられない構造でした。
そのため、今回は無理に削り込むのではなく、施工できる範囲で清掃し、破断部の状態を確認してから作業を進めています。
補修案件では、新規製作とは違って、
「すでに完成している製品の限られた場所で作業する」
という制約があります。
そのため、製品ごとに施工できる範囲を確認する必要があります。
まず元の位置と角度を合わせて仮付け
清掃後は、分離した部品を元の位置へ戻します。
今回特に重要だったのが、取っ手の位置と角度です。
しっかり溶接できても、元の位置から大きくずれてしまえば取っ手として使いにくくなります。
そこで、まず元の形を確認しながら部品を合わせて仮付けしました。
その後、
- 元の位置になっているか
- 角度に問題がないか
- 大きく傾いていないか
を確認してから本溶接へ進みます。
Panasonic TIG WP300でTIG溶接
今回の修理にはTIG溶接を使用しました。
使用した溶接機は
Panasonic TIG WP300です
シールドガスにはアルゴンを使用。
また、今回の溶加棒にはSUS308系を使用しました。
ただし、SUS309の溶加棒がすべてのステンレス製品の補修に適しているという意味ではありません。
ステンレスの鋼種、接合する材質、使用環境などによって適切な溶加材は変わります。
位置を維持しながら接合部をしっかり溶かす
今回のTIG溶接で意識したのは、大きく3点です。
1.元の位置
取っ手として使う製品なので、破断した部品を元に近い位置へ戻す必要があります。
そのため、仮付け段階から位置を確認しました。
2.角度
曲げプレートの根元部分なので、溶接中に部品が動けば取っ手の角度も変わります。
そこで、仮付け後にも再度角度を確認しています。
3.接合部分をしっかり溶かす
見た目だけ溶加棒を乗せるのではなく、母材の状態を見ながら接合部を溶融させることを意識して施工しました。
溶接後の研磨・焼け取りは行っていません
実際には今回、
- ビードの研磨
- 鏡面仕上げ
- 焼け取り処理
などは行っていません。
今回のお客様のご要望は、折れた取っ手を再び固定して使える状態にすることでした。
そのため、溶接後の研磨や外観仕上げまでは行わず、接合状態を確認して完了としています。
修理後は位置・角度・グラつきを確認
溶接が完了したら、
- 位置
- 角度
- グラつき
- 固定状態
を確認しました。
今回、お客様には工場で待っていただいていたため、完成後の状態もその場で目視確認していただいています。


問題がないことを確認いただき、そのままお返ししました。
今回の作業時間は、実際の溶接・確認を含めて10分程度でした。
ただし、これは今回の製品が比較的小さく、その場で施工可能と判断できたからです。
「10分で直せる」=いつでも即日対応ではありません
すべての持ち込み修理をその場で対応できるわけではありません。
実際には、
- 材質
- 製品の大きさ
- 破損状態
- 必要な溶接方法
- 工場の作業状況
- 必要な仕上げ
- 安全面・使用用途
などによって変わります。
そのため、原則として事前に写真などで内容を確認してからご相談いただく形が一番スムーズです。
内容と費用をご確認いただいたうえで、対応可能なものについて施工します。
今回のように、製品や当日の状況によってはその場で対応できるケースもあります。
ステンレス修理だけでなく新規製作も対応しています
今回の記事は修理事例ですが、有限会社アラヤではステンレス製品の新規製作・TIG溶接についても対応しています。
例えば、
- ステンレスフレーム
- ステンレスパイプ
- ブラケット
- 架台
- 機械部品
- 支給部品へのTIG溶接
- 一点物
- 小ロット製作
などです。
当社としては、修理だけでなく、図面やスケッチをもとにした新規製作案件も積極的に対応しています。
また、図面がない製品についても、内容によっては現物やスケッチから検討できる場合があります。
ステンレス製品の溶接修理をご相談ください
「ステンレスの取っ手が折れた」
「溶接部ではなく母材が割れてしまった」
「1個だけ直してほしい」
「図面がなく、現物しかない」
「TIG溶接で修理できるか見てほしい」
といった場合もご相談ください。
まず、
- 製品全体の写真
- 破損箇所のアップ写真
- 分かれば材質
- 製品のおおよその大きさ
- 何に使うものか
- 数量
をお送りいただけると、対応可能か判断しやすくなります。
個人のお客様についても対応可能ですが、内容と修理費用をご確認いただき、ご了承いただいたうえでの施工となります。
また、材質や使用用途、破損状態によっては修理できない場合もあります。
「これ、溶接で直せますか?」という段階から一度ご相談ください。

