アルミパイプの溶接修理|折れたフレームを交流TIGで補修

折れたアルミパイプをTIG溶接で修理|買い物カートの補修事例
今回は、アルミパイプが完全に折れてしまった買い物カートをTIG溶接で修理した事例をご紹介します。
近隣のお客様から、
「長年使用している買い物カートが折れてしまったので、溶接で直せませんか?」
とご相談いただきました。
そこで現物を確認すると、左右のアルミパイプが接合部で完全に破断している状態でした。
今回は破断部分を整え、元の位置へ合わせて仮付けしたうえで、交流TIG溶接で両側を補修しています。
アルミパイプは熱の入れ方によっては溶け落ちて穴が開くため、今回も特に母材へ熱を入れすぎないことに注意しながら施工しました。
今回のアルミ溶接修理の内容
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品 | 買い物カート |
| 破損状態 | 左右のアルミパイプが接合部で完全に破断 |
| 材質 | アルミ・詳細材質不明 |
| パイプ | 丸パイプ |
| 外径 | 約φ10mm程度 |
| 肉厚 | 不明 |
| 数量 | 1台 |
| 補強材 | 使用なし |
| 前処理 | 破断部の整形・清掃 |
| 溶接方法 | 交流TIG溶接 |
| 溶接機 | Panasonic TIG WP300 |
| シールドガス | アルゴン100% |
| 溶加棒 | 当時の記録がなく詳細不明 |
| 主な注意点 | 穴あき・入熱・位置・左右のバランス |
| 完成確認 | 固定状態・グラつき・左右位置・外観・動作 |
| 荷重試験 | 今回事例では実施なし |
接合部でアルミパイプが完全に破断
修理前の状態を確認します。

今回のカートは、左右ともアルミ製の丸パイプが接合部付近で完全に折れている状態でした。
破損した原因については確認できていません。
また、長く使用している製品の修理では、
- 材質の詳細が分からない
- 製作図面がない
- 板厚や肉厚が分からない
- 破損原因が特定できない
といったケースもあります。
今回はアルミ製であることは確認できましたが、A6063などの詳細な合金番号までは分かっていません。
溶接前に破断部分を整えて清掃
折れた部分をそのまま合わせてアークを出すのではなく、まず溶接できる状態へ整えます。
今回も破断部分を削って形を整え、溶接部分を清掃してから作業を行いました。
アルミの場合、表面には酸化アルミニウムの皮膜が存在します。
この酸化皮膜はアルミ母材そのものより非常に融点が高く、溶接を妨げる要因になるため、アルミTIGでは酸化皮膜への対応が重要です。交流TIGでは電極プラス側で生じるクリーニング作用を利用できるため、アルミ合金の溶接に広く使われています。
ただし、交流TIGのクリーニング作用があるからといって、汚れたままで施工してよいわけではありません。
実際の溶接前には、接合部を清掃して状態を整えています。
元の位置へ合わせて仮付け
前処理が終わったら、折れたパイプを元の位置へ戻します。
今回の修理では、内側に丸棒や別のパイプを差し込む補強は行っていません。
破断したパイプ同士を元の位置へ合わせ、角度や左右の位置を確認して仮付けしています。

左右のパイプを別々に溶接するため、一方だけ位置がずれるとカート全体がねじれたり、使用時の姿勢が変わったりする可能性があります。
そのため、
- 元の角度になっているか
- 左右の位置が合っているか
- カート全体がねじれていないか
を確認してから本溶接へ進みます。
交流TIG溶接でアルミパイプを補修
今回使用したのは交流TIG溶接です。
使用した溶接機は、
Panasonic TIG WP300
シールドガスには、
アルゴン100%
を使用しています。
アルミのTIG溶接では、鉄やステンレスとは違う感覚があります。
母材表面の状態や熱の入り方を見ながら施工する必要があり、特に今回のような細いパイプでは、溶け始めた後に一気に穴を開けないよう注意します。
今回一番注意したのは「穴を開けないこと」
今回の施工で特に注意したのは、アルミパイプへ熱を入れすぎて穴を開けないことです。
パイプ自体が細く、肉厚も大きな製品ではありません。
必要な部分をしっかり接合するためには母材を溶融させる必要がありますが、熱を加えすぎるとそのまま母材が溶け落ちてしまいます。
そこで、
- アークを当てる位置
- 熱を入れる時間
- 溶融池の状態
- パイプの形状
- 接合部の状態
を確認しながら施工しました。
アル左右両側をTIG溶接
買い物カートは片側だけではなく、左右両側とも破断していました。
そのため、それぞれ位置を確認しながらTIG溶接していきます。


溶接時には穴あきだけでなく、
左右の位置をずらさないこと
も確認しています。
溶接して接合できても、フレーム全体が大きくねじれてしまえば、製品として使いにくくなるためです。
修理後はグラつき・位置・動作を確認
両側の溶接が完了したら、修理状態を確認します。
今回は、
- パイプが固定されているか
- 接合部分に大きなグラつきがないか
- 左右位置に問題がないか
- 外観上問題がないか
- 実際にカートを押して動かせるか
を確認しました。
問題がないことを確認して、お客様へ返却しています。
アルミ製品の修理は現物確認が必要になることがあります
アルミ製品の修理について、
「写真だけで絶対に直せると言ってほしい」
という場合、難しいことがあります。
実際には、
- アルミの材質
- 肉厚
- 破断位置
- 腐食状態
- 製品形状
- 必要な強度
- 表面処理
などを確認して、溶接可能か判断する必要があるためです。
今回のように写真や電話だけでは判断しにくい場合は、現物を持ち込んでいただいて確認することも可能です。
アルミフレーム・機械部品の溶接修理をご相談ください
有限会社アラヤでは、今回のような一般製品だけでなく、製造業で使用するアルミ部品・アルミフレームなどの溶接についてもご相談いただけます。
例えば、
- アルミパイプが折れた
- アルミフレームの溶接部が割れた
- アルミブラケットを補修したい
- アルミ製の機械部品を1個だけ溶接してほしい
- 支給した部品の溶接工程だけお願いしたい
- 他社でアルミ溶接が難しいと言われた
- 図面がなく、現物しかない
といった案件です。
アルミは材質や形状によって対応できるもの・難しいものがありますので、まず状態を確認したうえで対応可否をご案内します。
大阪でアルミ溶接・修理をご検討の企業様へ
今回の記事は買い物カートの修理事例ですが、当社として特にご相談いただきたいのは、メーカー様や工場で使用しているアルミ製品・部品の溶接案件です。
お問い合わせの際は、
- 製品全体の写真
- 破損部分のアップ写真
- 分かればアルミの材質
- パイプ径や板厚
- 製品全体の大きさ
- 何に使用するものか
- 数量
- 必要な強度や使用条件
- 希望納期
などをお知らせください。
現物を確認しなければ判断できない場合は、持ち込みでの確認も可能です。
個人のお客様の修理についても対応可能ですが、製品価格に対して修理費用が高くなる場合があります。
その場合も、まずお見積りをご案内し、了承いただいてから施工します。
今回のように近隣のお客様の製品をこちらから引き取りに伺う対応は、常時行っているサービスではありません。
通常はまず写真などで内容を確認し、必要に応じて持ち込みをご相談させていただきます。
「このアルミ部品、溶接できますか?」という段階から一度お問い合わせください。

