SUS630はろう付けできる?SUS304との接合方法・注意点・事例を解説

SUS630とSUS304  ろう付け様子

SUS630はろう付けできる?SUS304との接合方法と注意点を解説

「溶接ではなく、ろう付けで接合できる?」

「ステンレス同士の小さな部品を接合してくれる会社を探している」

「SUS630とSUS304を接合したい」

このような場合、条件によってはSUS630とSUS304をろう付けで接合することが可能です。

有限会社アラヤでも、実際にSUS630とSUS304を組み合わせた部品を銀ろうで接合しています。

ただし、SUS630とSUS304では材料特性が異なります。

また、ろう付けでは母材を直接溶融させないものの、接合部周辺を高温まで加熱するため、使用するろう材・フラックス・加熱方法・製品の要求仕様などを確認して施工することが重要です。

この記事では、SUS630とSUS304の違いから、ろう付けするときに注意したいポイント、当社で実際に施工している事例まで紹介します。

SUS630とは?

SUS630は、析出硬化系ステンレス鋼に分類される材料です。

17-4PHとも呼ばれ、熱処理によって強度や硬さなどの機械的性質を調整できる特徴があります。

そのため、

  • シャフト
  • ピン
  • 機械部品
  • 高い強度が求められる部品

などに使用されています。

一般的なSUS304とは異なり、SUS630では熱処理条件が材料特性に大きく関係します。

そのため、接合方法を検討するときも、単に「ステンレスだから溶接・ろう付けできる」と判断するのではなく、現在の熱処理状態や接合後に求められる性能を確認することが大切です。

SUS304とは?

SUS304は、代表的なオーステナイト系ステンレス鋼です。

身近なステンレス製品から機械部品、設備、製缶品まで幅広く使用されています。

当社でも、

  • TIG溶接
  • 製缶加工
  • ろう付け

など、さまざまな加工で扱うことがあります。

SUS630とSUS304はどちらもステンレスですが、組成や組織、熱処理による性質などが異なる材料です。

そのため、異なる鋼種を組み合わせて接合する場合は、製品の用途や要求仕様を確認したうえで接合方法を選ぶ必要があります。

SUS630とSUS304はろう付けできる?

条件が合えば、SUS630とSUS304をろう付けで接合することは可能です。

ろう付けは、接合する母材そのものを溶かすのではなく、母材より融点の低い「ろう材」を溶かして接合する方法です。

当社でも、SUS630とSUS304の接合に銀ろうを使用した実績があります。

ただし、

「SUS630×SUS304なら必ず銀ろうで接合すればよい」

というわけではありません。

製品によって、

  • 接合部の形状
  • クリアランス
  • 使用温度
  • 必要な強度
  • 腐食環境
  • 母材の熱処理状態
  • ろう付け後の後工程

などが異なるためです。

そのため、実際の加工では図面や仕様を確認してから対応方法を判断します。

ろう付けと溶接は何が違う?

溶接とろう付けの大きな違いの一つが、母材を溶かして接合するかどうかです。

TIG溶接などでは母材を溶融させて接合します。

一方、ろう付けでは基本的に母材そのものを溶かさず、接合部へ溶融したろう材を流して接合します。

そのため、

  • 小さな部品
  • 細いピン
  • 異なる材料の組み合わせ
  • 母材を直接溶かしたくない部品

などで、ろう付けが選択される場合があります。

ただし、ろう付けでも母材には熱が加わります。

そのため、「ろう付けなら熱影響がない」というわけではありません。

特に熱処理によって性質が変化する材料では、製品側の要求仕様も含めて接合方法を検討する必要があります。

ステンレスのろう付けでは表面状態が重要

ステンレス表面には、耐食性に関係する酸化皮膜があります。

しかし、ろう付けでは、この表面状態がろう材の濡れや流れに影響します。

そこで重要になるのが、

  • 接合部の洗浄
  • 油分や汚れの除去
  • フラックス
  • 加熱方法

です。

当社でも実際のろう付け前には、必要に応じてパーツクリーナーなどで接合部周辺を清掃しています。

その後、使用するろう材に合わせたフラックスを使用して加熱します。

フラックスにはどんな役割がある?

ろう付けで使用するフラックスには、加熱中に生じる酸化物を除去し、再酸化を抑えながらろう材を流れやすくする役割があります。

一方で、フラックスを使用すれば油汚れや厚い錆まですべて除去できるわけではありません。

そのため、ろう付け前には接合部を清掃し、そのうえでフラックスを使用します。

当社のSUS630とSUS304のろう付け事例では、ハンディーフラックス低温用を使用しています。

ステンレスのろう付けでは加熱しすぎない

ステンレスをトーチでろう付けする際に重要なのが、局部的に加熱しすぎないことです。

必要以上に加熱すると母材表面の酸化が進み、ろう材が流れにくくなる原因になります。

そのため、

「とにかく母材を赤くなるまで加熱する」

という作業ではありません。

実際の施工では、

  • フラックスの状態
  • 母材への熱の入り方
  • ろう材の溶け始め
  • ろう材の流れ

を見ながら火を動かします。

特に小さな部品では短時間でも熱が入りやすいため、加熱する位置や時間を調整する必要があります。

SUS630では熱処理状態にも注意が必要

特に注意したいのが、熱によって機械的性質が変化する材料であることです。

SUS630は析出硬化処理によって強度や硬さなどを調整する材料です。

そのため、すでに熱処理された部品へろう付けを行う場合は、

  • 現在の熱処理状態
  • ろう付け温度
  • 加熱時間
  • 接合後に必要な硬さや強度
  • 後工程

などを製品側で確認する必要があります。

当社では材料そのものの熱処理設計や、ろう付け後の材料特性を保証する試験までは行っていません。

そのため、要求される性能が明確な製品については、お客様の図面・仕様・使用するろう材などをご提示いただいたうえで施工しています。

小径部品では熱の入れ方が難しくなる

部品が小さくなるほど、ろう付けは簡単になるとは限りません。

むしろ小さな部品の場合、少し火を当てるだけでも温度が上がりやすくなります。

そのため、

  • ピンを加熱しすぎない
  • 母材全体の温度を見る
  • ろう材を必要以上に流さない
  • 隣接する接合部への熱影響を見る

といったことが重要になります。

特に複数の接合部が近接している製品では、一か所目を施工したときの熱が、次の接合部分にも残っています。

そこで、すべての箇所へ同じ時間だけ火を当てるのではなく、その時の母材温度を見ながら加熱を調整します。

実際にSUS630とSUS304をろう付けした事例

当社では、実際にSUS630とSUS304を組み合わせた医療機器部品のろう付けを定期的に行っています。

医療機器部品のため、お客様から掲載許可をいただいた範囲のみ公開しています。

今回の製品では、SUS630側に設けられた約φ1.5mmの小径穴へSUS304製の細いピンが差し込まれています。

その接合部を、客先指定の銀ろうを使用してろう付けしています。

数量はその都度異なりますが、数個から20個程度のロットで定期的にご依頼いただいている製品です。

酸素・アセチレンで銀ろうを施工

実際の作業では、酸素・アセチレンを使用して加熱します。

接合部が非常に小さいため、特に注意するのがSUS304製ピンへの熱の与えすぎです。

また、1つの部品に複数のろう付け箇所があります。

そのため、一か所を施工した後は部品に残っている熱も考慮し、次の箇所に火を当てる時間やタイミングを変えています。

温度計で数値を測りながら施工しているわけではなく、母材・フラックス・銀ろうの状態を見ながら職人が判断しています。

ろう付け後はろうの回りと外観を確認

施工後は洗浄し、

  • 銀ろうが接合部へ回っているか
  • 外観上問題がないか

を確認しています。

ただし、ろう付け部の内部まで外観だけで完全に確認できるわけではありません。

今回の医療機器部品については、その後の強度試験や研磨仕上げなどをお客様側で行っています。

当社では指定されたろう付け工程を担当し、外観とろうの回りを確認したうえで納品しています。

実際の施工工程や写真については、

SUS630とSUS304のろう付け|医療機器部品の微細接合事例

でも詳しく紹介しています。

SUS630とSUS304のろう付けで確認したい情報

SUS630とSUS304のろう付けをご相談いただく際は、次の情報があると対応可否を判断しやすくなります。

  • SUS630・SUS304それぞれの部品形状
  • 図面
  • 接合箇所
  • 接合部の寸法
  • クリアランス
  • 使用するろう材
  • フラックスの指定
  • 数量
  • 使用用途
  • 必要な検査
  • 熱処理条件がある場合はその仕様
  • ろう付け後の後工程

特に、材料やろう材などの仕様が決まっている案件であれば、当社でも施工条件を確認しやすくなります。

SUS630・SUS304以外のろう付けもご相談ください

有限会社アラヤでは、SUS630とSUS304だけでなく、さまざまな金属部品のろう付けを行っています。

例えば、

  • ステンレス部品
  • 小径ピン
  • ノズル
  • 機械部品
  • 超硬部品
  • 異種金属部品
  • 数個程度の試作品
  • 数十~数百個程度の小ロット・継続品

などです。

ろう付けそのものの仕組みや溶接との違いについては、

ろう付けとは?溶接との違い・仕組み・メリットをわかりやすく解説

でも紹介しています。

SUS630とSUS304のろう付けをご相談ください

「SUS630とSUS304をろう付けしてほしい」

「加工済みの部品を支給するので、ろう付け工程だけお願いしたい」

「指定した銀ろうで施工してほしい」

「小さな部品を複数個ろう付けしてほしい」

「現在のろう付け外注先とは別の加工先を探している」

といった案件もご相談ください。

お問い合わせの際は、図面・材質・接合箇所・ろう材・数量・必要な検査などを分かる範囲でお知らせください。

当社では材料設計や接合方法をゼロから決定することを専門としているわけではありませんが、仕様や使用する材料、接合方法などがある程度決まっているろう付け案件は積極的にご相談いただけます。

まずは図面や写真を確認し、対応可能か検討します。

「このSUS630とSUS304の部品をろう付けできますか?」という段階からお問い合わせください。

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