肉盛り溶接でSS400機械部品を補修|3mm以上の取り代をTIGで確保

SS400機械部品の肉盛り溶接|TIGで3mm以上の取り代を確保
今回は、SS400製の機械部品へTIG溶接で肉盛りを行った事例をご紹介します。
お客様から支給された部品の指定面に、後工程の機械加工に必要な取り代を確保するため、
「3mm以上肉盛りしてほしい」
というご依頼でした。
今回は施工する範囲が比較的小さく、高さを確認しながら細かく肉盛りしやすいことからTIG溶接を使用。
1層では必要な高さを確保できないため、2層に分けて肉盛りし、最後にノギスで3mm以上の高さが確保できていることを確認して納品しました。
今回の肉盛り溶接の仕様
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品 | 機械部品 |
| 詳細用途 | 不明 |
| 材質 | SS400 |
| 数量 | 1個 |
| 部品 | 客先支給品 |
| 依頼内容 | 指定面へ3mm以上の肉盛り |
| 目的 | 後工程の機械加工に必要な取り代の確保 |
| 溶接方法 | TIG溶接 |
| TIG溶接機 | DAIHEN インバータアルゴ300P |
| シールドガス | アルゴン |
| 溶加棒 | 当時の記録がなく詳細不明 |
| 積層 | 2層 |
| 予熱 | 今回事例では実施なし |
| 高さ確認 | ノギス |
| 後加工 | お客様側で機械加工 |
| 最終確認 | 高さ・外観・クラック・ピット等 |
肉盛り溶接とは?
肉盛り溶接とは、母材の表面に溶接金属を重ね、必要な厚みや形状を追加する加工方法です。
摩耗して減った部分を復元する補修に使われることもあれば、今回のように、後工程で機械加工するための取り代を追加する目的で使われることもあります。
日本溶接協会でも、肉盛り溶接は減肉部などに対する溶接補修方法の一つとして扱われています。また、対象材料や使用条件、多層盛り、溶接割れや変形などを考慮する必要があるとされています。
今回の事例は、耐摩耗性の高い材料を盛る「硬化肉盛り」ではありません。
SS400の機械部品へ溶接金属を追加し、後から機械加工できるだけの厚みを確保する肉盛り加工です。
お客様の指定は「3mm以上」
今回の支給部品には、お客様が肉盛りする位置と「3」という数字を書いてくださっていました。

この「3」は、
仕上がり寸法をちょうど3mm高くする
という意味ではありません。
後工程でお客様が機械加工を行うため、削り代を含めて3mm以上の高さを確保してほしいという指示です。
そのため、肉盛り後には高さが不足している部分がないように確認する必要があります。
小さな範囲なのでTIG溶接を選択
今回の肉盛りにはTIG溶接を使用しました。
使用した設備は、
DAIHEN インバータアルゴ300P
です。
シールドガスにはアルゴンを使用しています。
今回TIGを選んだ理由は、肉盛りする範囲が比較的小さく、溶着量やビード位置を細かく調整しながら施工しやすいためです。
肉盛り溶接だから必ずTIGを使用するわけではなく、部品の大きさや材質、肉盛りする面積、必要な溶着量などによって溶接方法は変わります。
まず1層目を肉盛り
肉盛りする面へTIG溶接で1層目を施工します。

今回、特別な前処理や予熱は行っていません。
支給された部品の状態を確認したうえで、そのまま肉盛り工程へ進めています。
1層目が終わった段階では、まだお客様から指定された3mm以上の高さには足りません。
そのため、さらに2層目を重ねていきます。
2層目へ進む前に1層目を確認
1層目が終わったからといって、そのまますぐ上から2層目を重ねるわけではありません。
まず、
- 溶接部に欠陥がないか
- 表面の状態に問題がないか
- 次の層を重ねるうえで支障となる付着物などがないか
を確認します。
必要に応じて表面を清掃してから2層目へ進みます。
多層で肉盛りすると、下の層は完成後には直接確認しにくくなります。
そのため、層を重ねる前に一度状態を確認することが大切です。
2層目で3mm以上の高さを確保
1層目の状態を確認したら、2層目を肉盛りします。


ここで意識しているのが、単純に高さだけを出すのではなく、できるだけビード高さをそろえて盛ることです。
今回の部品は、肉盛り後にお客様側で機械加工します。
高さが大きくバラついていると、後工程で削る量も増えます。
そのため、
とにかくたくさん盛ればいい
というわけではありません。
必要な高さを確保しながら、後工程で加工しやすい状態を考えてビードを重ねていきます。
肉盛り後はノギスで高さを確認
2層目まで完了したら、肉盛りした部分を確認します。

今回確認したのは、
- 3mm以上の高さが確保できているか
- 高さが不足している部分がないか
- クラックがないか
- ピットなどの欠陥がないか
- 外観上問題がないか
といった項目です。
高さについてはノギスを使用して確認しました。
必要な取り代が確保できていることを確認した後、お客様へ納品。
その後の最終的な機械加工は、お客様側で行われます。
肉盛りから機械加工まで考えて施工する
肉盛り溶接というと、
「金属を付け足す作業」
と思われがちです。
しかし今回のように後工程で機械加工する部品では、
その後どう加工されるのか
まで考える必要があります。
必要量より少なければ、機械加工後に必要な寸法まで仕上げることができません。
反対に、不必要に大きく盛れば、その分だけ後工程で削る量が増えます。
今回のような案件では、
指定された最低高さを確保しながら、できるだけ均一に肉盛りする
ことを意識しています。
1個だけ・支給部品への肉盛りもご相談ください
今回の製品は1個だけの単発加工でした。
有限会社アラヤでは、こうした支給部品への肉盛り溶接についてもご相談いただけます。
例えば、
- 機械加工後にもう一度厚みを付けたい
- 摩耗した部分の寸法を戻したい
- 欠けた部分へ肉盛りしたい
- 後からフライス加工するので取り代が欲しい
- 指定面へ○mm以上盛ってほしい
- 1個だけ肉盛りしてほしい
- 部品を支給するので溶接工程だけお願いしたい
といった案件です。
材質や形状、肉盛り量によって施工方法は変わるため、まずは図面や現物を確認して対応可能か検討します。
硬化肉盛りは専門の協力会社と連携
なお、耐摩耗性を高めることを目的として特殊な溶接材料を使用する硬化肉盛りについては、当社で直接施工している加工とは異なります。
当社では硬化肉盛りを専門に行っている協力会社と連携しており、案件内容によってはご相談可能です。
日本溶接協会でも、肉盛り溶接補修では対象材料や使用環境などを考慮する必要があるとされており、目的に応じて施工方法を選ぶことが重要です。
ですので、
「普通の肉盛りなのか、耐摩耗用の硬化肉盛りが必要なのか分からない」
という段階でも、一度ご相談ください。
肉盛り溶接・機械加工前の補修をご相談ください
「この部分にあと3mm欲しい」
「削った部品へもう一度肉を付けたい」
「機械加工するための取り代を作ってほしい」
「摩耗した部品を肉盛りできるか見てほしい」
こういった段階からでも構いません。
お問い合わせの際は、
- 材質
- 製品全体の写真
- 肉盛りしたい部分の写真
- 肉盛り範囲
- 必要な高さ
- 肉盛り後に機械加工するか
- 数量
- 使用用途
- 希望納期
などをお知らせいただけると、対応可否を判断しやすくなります。
肉盛り後の機械加工についても、形状・寸法によっては当社で対応可能です。対応できない加工については、内容を確認してご相談させていただきます。
「この部品に○mm盛れますか?」という段階から、お気軽にお問い合わせください。

