溶接欠陥の種類とは?原因・対策・代表的な欠陥をわかりやすく解説

溶接欠陥の種類とは?原因・対策・検査方法をわかりやすく解説
溶接部には、条件や施工状態によってブローホール、アンダーカット、溶込み不良、割れなど、さまざまな不具合が発生することがあります。
一般的に、こうした不具合は「溶接欠陥」と呼ばれます。
ただし、溶接部にわずかな不完全部が見つかったからといって、すべてが同じように不合格になるわけではありません。
実際に許容できるかどうかは、
- 製品の用途
- 図面
- 適用される規格
- お客様の要求仕様
- 欠陥の種類や大きさ
- 使用時の荷重
などによって判断が変わります。
一方で、割れのように特に注意が必要な欠陥もあります。
この記事では、代表的な溶接欠陥の種類、それぞれの主な原因、発生を抑えるための考え方、溶接後の確認方法について解説します。
溶接欠陥とは?
溶接では、母材を局部的に溶かして接合します。
そのため、
- 溶接条件
- 母材の状態
- 継手形状
- 溶接材料
- シールドガス
- 溶接姿勢
- トーチや電極の狙い位置
- 溶接速度
- 作業環境
など、さまざまな要因が溶接部の状態に影響します。
これらの条件が適切でない場合、溶接金属の内部や表面に不完全部が発生することがあります。
日本溶接協会でも、代表的な溶接欠陥として、気孔、割れ、スラグ巻込み、溶込み不良、融合不良、アンダーカット、オーバーラップなどが挙げられています。
見つかったものがすべて「即補修」とは限らない
溶接部にアンダーカットやブローホールなどが見つかった場合でも、許容できる範囲は製品や適用規格によって異なります。
例えば、アンダーカットについても用途や継手方向などによって許容値が定められる場合があります。
そのため、
「少しでもあれば必ず不良」
と一律に判断するのではなく、要求されている品質基準と照らし合わせて判断することが重要です。
代表的な溶接欠陥の種類
ここからは、実際の溶接で注意される代表的な欠陥を紹介します。
ブローホール
ブローホールとは
溶接金属の内部にガスが閉じ込められてできる気孔です。
溶融金属の中に入ったガスが、金属が凝固するまでに外へ抜けきれず、内部に残ることで発生します。
主な原因
主な要因として、
- シールドガスが十分に機能していない
- 風によってシールドガスが乱れる
- 母材に油・錆・水分などが付着している
- 溶接材料に水分が含まれている
- メッキや塗膜などの表面付着物がある
- ガス流量が適切でない
などがあります。
必ず一つの原因だけで発生するとは限りません。
対策
- 溶接前に母材を清掃する
- シールドガスの状態を確認する
- 屋外作業では風の影響を確認する
- 溶接材料を適切に管理する
- 母材表面の塗膜や付着物を確認する
などが基本になります。
ピット
ピットとは
ブローホールと同じ気孔現象のうち、気孔が溶接ビードの表面に開口して見えるものです。
内部に残ったものをブローホール、表面へ開口したものをピットと呼び分けます。
そのため、
「溶接終了部にできるへこみ=ピット」
ではありません。
溶接終了部にできるへこみについては、後述するクレータと区別して考えます。
主な原因・対策
基本的にはブローホールと同様に、
- シールド状態
- 母材の汚れ
- 水分
- 表面付着物
- 溶接材料
- 溶接条件
などを確認します。
アンダーカット
アンダーカットとは
溶接ビードの止端に沿って母材側が溝状に削れたようになる状態です。
深いアンダーカットは断面減少や応力集中につながる場合があります。
主な原因
例えば、
- 溶接電流が高すぎる
- 溶接速度が速すぎる
- アーク長や溶接条件が適切でない
- トーチや電極の角度が適切でない
- 狙い位置が適切でない
などによって発生する場合があります。
日本溶接協会でも、溶接電流・溶接速度などの条件とアンダーカット発生との関係が解説されています。
対策
板厚や継手形状に合わせて、
- 電流
- 電圧
- 溶接速度
- トーチ角度
- 狙い位置
などを調整します。
オーバーラップ
オーバーラップとは
溶接金属が止端部で母材と十分に融合せず、母材表面に重なった状態です。
単純にビードが大きいこととは異なります。
日本溶接協会では「溶接金属が止端で母材に融合しないで重なった部分」とされています。
主な原因
- 溶接速度が遅い
- 溶融金属量が多い
- 溶接条件が適切でない
- トーチや電極の角度が適切でない
- 溶融金属が先行している
などが考えられます。
対策
溶融池の状態を確認しながら、電流・電圧・速度・角度などを調整します。
溶込み不良
溶込み不良とは
設計上必要な溶込みに対して、実際の溶込みが不足している状態です。
例えば突合せ溶接のルート部分など、本来溶融する必要がある部分まで十分に溶け込んでいない状態です。
主な原因
- 入熱不足
- 溶接電流が適切でない
- 溶接速度が適切でない
- 開先形状が適切でない
- ルート間隔が適切でない
- ワイヤや電極の狙い位置が適切でない
などがあります。
対策
板厚や継手に合わせ、
- 溶接条件
- 開先形状
- ルート間隔
- 狙い位置
- 溶接速度
などを確認します。
必要な溶込みは製品や継手によって異なるため、単純に「深く溶かせばよい」というものではありません。
融合不良
融合不良とは
母材と溶接金属、または溶接金属同士が十分に溶け合っていない状態です。
溶込み不良と混同されやすい欠陥ですが、技術的には区別されています。
例えば、多層溶接で前のビードと次のビードが十分に融合していない場合などがあります。
主な原因
- 入熱不足
- 溶融金属がアークより先行する
- トーチ・ワイヤの狙い位置が適切でない
- 開先形状が適切でない
- 前パスのビード形状が適切でない
- パス間の処理が十分でない
などがあります。
溶込み不良との違い
簡単に整理すると、
| 種類 | 考え方 |
|---|---|
| 溶込み不良 | 必要な深さ・ルートまで溶け込んでいない |
| 融合不良 | 接するべき面同士が十分に溶け合っていない |
となります。
似ていますが、同じ欠陥ではありません。
スラグ巻込み
スラグ巻込みとは
溶接金属内部にスラグが取り込まれて残る状態です。
被覆アーク溶接やフラックスを使用する溶接など、スラグが発生する溶接方法で特に注意する欠陥です。
当社で鉄製品に主に使用しているCO₂半自動溶接のソリッドワイヤは、被覆アーク溶接のようなスラグを形成する溶接方法とは異なります。
主な原因
- 前パスのスラグ除去不足
- 開先が狭い
- ビード形状が適切でない
- 融合不良
- 溶接条件や狙い位置が適切でない
などがあります。
対策
スラグを生じる溶接では、必要に応じてパス間の清掃を行い、前のビードの状態を確認してから次の溶接へ進みます。
割れ(クラック)
溶接割れとは
溶接金属や熱影響部に発生する亀裂です。
割れは応力集中や破壊の起点になる可能性があるため、溶接欠陥の中でも特に注意が必要です。
溶接割れにはさまざまな種類がありますが、発生する温度によって大きく高温割れと低温割れに分けられます。
高温割れ
高温割れは、溶接中や冷却途中の高温域で発生する割れです。
代表的なものには、溶接金属の凝固時に発生する凝固割れがあります。
材質や溶接金属の成分、継手形状、溶接条件、収縮によるひずみなど、複数の要因が関係します。
低温割れ
低温割れは、溶接部がある程度冷却した後に発生する割れです。
鋼材では、
- 拡散性水素
- 硬化した組織
- 溶接部に働く応力や拘束
などが関係します。
また、溶接直後には確認できなくても、時間が経過してから発生する場合があり、遅れ割れと呼ばれることもあります。
割れを防ぐためには
材質や板厚、製品形状などに応じて、
- 適切な溶接材料を選ぶ
- 母材や溶接材料の水分・汚れを管理する
- 適切な溶接条件を設定する
- 必要に応じて予熱を検討する
- 拘束状態を確認する
- 適切な入熱管理を行う
などを検討します。
すべての材料で「予熱すれば割れない」というものではなく、材質や施工条件によって対策は異なります。
クレータ・クレータ割れ
クレータとは
溶接を終了するときにビード終端部へできるへこみです。
先ほど説明したピットとは別のものです。
溶接終了時の処理が適切でないと、クレータ部分に割れが発生する場合があります。
これがクレータ割れです。
特に割れ感受性のある材料では、溶接終端部の処理にも注意が必要です。
薄板で注意したい溶け落ち・穴あき
薄い板を溶接する場合は、溶け落ちや穴あきにも注意が必要です。
母材へ必要以上に熱が入ると、溶融金属を保持できず穴が開く場合があります。
特に、
- 薄板
- 部材同士の隙間が大きい
- 電流や入熱が大きい
- 一か所へ長時間熱を入れる
といった条件では注意が必要です。
そのため薄板では、母材の溶け方を確認しながら条件や施工方法を調整します。
外観だけで確認できる欠陥と内部に隠れる欠陥がある
溶接欠陥の中には、目視しやすいものと内部に隠れるものがあります。
| 溶接欠陥 | 主な発生位置 | 目視による確認 |
|---|---|---|
| ピット | 表面 | 確認しやすい |
| アンダーカット | 表面 | 確認しやすい |
| オーバーラップ | 表面 | 確認しやすい |
| クレータ | 表面 | 確認しやすい |
| 表面割れ | 表面 | 大きさによる |
| ブローホール | 内部 | 基本的に困難 |
| 溶込み不良 | ルート・内部など | 状態による |
| 融合不良 | 内部・境界面など | 状態による |
| スラグ巻込み | 主に内部 | 基本的に困難 |
| 内部割れ | 内部 | 困難 |
外観試験では、ビード形状、アンダーカット、オーバーラップ、ピットなどを確認できますが、内部欠陥は外観だけでは判断できません。
溶接部の検査方法
要求される品質によっては、目視だけでなく非破壊検査が使用されます。
外観・目視確認
まず基本となるのが外観確認です。
例えば、
- ビード形状
- アンダーカット
- オーバーラップ
- ピット
- 表面割れ
- 溶接忘れ
- ビード寸法
- スパッタ
- 製品寸法
などを確認します。
浸透探傷試験(PT)
表面に開口している微細な割れなどを検出するために使用される方法です。
非磁性材料にも使用できます。
磁粉探傷試験(MT)
強磁性体の表面や表面近くにある欠陥を検出する方法です。
超音波探傷試験(UT)
超音波を利用して、溶接部内部の不連続部を検出します。
放射線透過試験(RT)
X線やγ線などを利用して内部を確認する方法です。
ブローホールやスラグ巻込みなど、体積を持つ内部欠陥の検出に利用されます。
どの検査方法が適しているかは、材質・板厚・継手形状・確認したい欠陥などによって異なります。
溶接欠陥を防ぐために溶接前に確認すること
溶接欠陥は、溶接を始める前の準備も重要です。
母材を確認する
溶接部分に、
- 油
- 水分
- 錆
- 塗料
- メッキ
- その他の付着物
がないか確認します。
必要に応じて清掃してから施工します。
継手の状態を確認する
図面や製品に合わせ、
- 開先
- ルート間隔
- 部材位置
- 目違い
- 隙間
などを確認します。
溶接材料を確認する
母材や要求仕様に合った溶接材料を使用します。
また、溶接材料によっては保管状態や吸湿にも注意が必要です。
シールドガスと作業環境を確認する
TIG・MAG・MIG・CO₂溶接などでは、シールド状態が品質へ影響します。
特に風がある環境ではシールドガスが乱れる場合があります。
溶接中に確認すること
施工中は、
- アークの状態
- 溶融池
- ビード形状
- 溶込み
- トーチの角度
- 狙い位置
- 溶接速度
- シールドガス
- 母材への熱の入り方
などを確認します。
多層溶接などでは、必要に応じて前パスの状態や清掃状況も確認してから次の溶接へ進みます。
溶接後に確認すること
溶接後は製品に合わせて、
- ビード外観
- 割れ
- ピット
- アンダーカット
- オーバーラップ
- 脚長
- 溶接位置
- 製品寸法
- 歪み
などを確認します。
重要なのは、溶接が付いているかを見るだけでなく、その製品で求められている項目を確認することです。
仮付けや溶接順序は「欠陥」と「歪み」を分けて考える
仮付けや溶接順序も製缶では重要ですが、主に、
- 部材位置
- 寸法
- 直角
- 歪み
- 拘束状態
などを管理する意味があります。
ブローホールやピットなどの直接的な対策とは少し役割が異なります。
溶接による歪みについては、別の記事で原因や溶接順序、入熱との関係を詳しく解説しています。
関連記事:溶接歪みが発生する原因とは?種類・対策・歪みを抑える方法を解説
有限会社アラヤでの溶接部の確認



有限会社アラヤでは、鉄のCO₂半自動溶接を中心に、ステンレス・アルミなどのTIG溶接にも対応しています。
製作時には製品に合わせて、
- 母材や接合部の状態
- 材質・板厚
- 溶接条件
- ビード外観
- 割れやピットなどの有無
- 必要な脚長
- 完成寸法
- 歪み
などを確認しています。
ただし、当社ではUT・RT・PT・MTなどの非破壊検査は自社では行っていません。
非破壊検査や特定の検査基準が必要な製品については、見積・製作前に要求仕様をご提示ください。
実際の製作でも製品ごとに確認項目が変わる
建設機械用ホッパー
建設機械用ホッパーでは、客先支給のホッパー本体へ口金や脚をCO₂半自動溶接しています。


施工後は、
- 溶接外観
- 溶込み
- 脚長
- 製品寸法
- 漏れ
などを確認しています。
完成したホッパーには水を入れ、漏れがないか確認しています。
関連記事:建設機械用ホッパーの溶接事例
ステンレスホッパーの割れ補修
樹脂成形会社様から持ち込まれたステンレスホッパーでは、既存の溶接部に複数の割れが発生していました。
割れ部分を確認しながらTIG溶接で補修し、施工後は溶接部や割れ、ピットなどを目視で確認しています。
なお、この事例では当社で漏れ試験・強度試験は実施していません。
関連記事:ステンレスホッパーの修理事例
半自動溶接では板厚・継手に合わせて条件を変える
当社では鉄の2.3~16mm程度を中心にCO₂半自動溶接を行っています。
同じ半自動溶接でも、板厚や継手によって注意するポイントは異なります。
薄板では穴あきや歪み、厚板では必要な溶込みや脚長などを確認しながら施工します。
関連記事:半自動溶接とは?2.3~16mm板厚での特徴と使い分け
よくある質問
溶接欠陥は見た目だけで分かりますか?
すべてを外観だけで確認することはできません。
アンダーカット、オーバーラップ、ピットなど表面に現れるものは目視できますが、ブローホール、融合不良、内部割れなどは外観から確認できない場合があります。
必要な品質によっては非破壊検査が使用されます。
ブローホールやアンダーカットがあれば必ず補修ですか?
一律には判断できません。
欠陥の種類・大きさ、製品用途、図面、適用規格、要求品質などによって判断します。ブローホールやスラグ巻込みについても、要求性能などを考慮して許容基準が設定される場合があります。
割れは補修できますか?
製品や材質、割れの状態によります。
割れ部分を除去して再溶接できる場合もありますが、まず割れの範囲や原因を確認することが重要です。
単純に表面だけを溶接して埋めればよいとは限りません。
溶接欠陥はあとから修理できますか?
欠陥の種類や製品によっては、欠陥部を除去して再溶接することで補修できる場合があります。
一方、材質や製品用途、欠陥位置によっては補修が難しい場合もあります。
TIG溶接なら溶接欠陥は少なくなりますか?
TIG溶接でも欠陥は発生します。
品質が決まるのは溶接方法だけではなく、母材、溶接材料、条件、清掃状態、作業方法などが関係します。
溶接欠陥を減らすには基本工程の積み重ねが重要
溶接欠陥には、
- ブローホール
- ピット
- アンダーカット
- オーバーラップ
- 溶込み不良
- 融合不良
- スラグ巻込み
- 割れ
- クレータ割れ
- 溶け落ち・穴あき
など、さまざまな種類があります。
そして、原因も一つではありません。
そのため、
母材の確認 → 溶接前の清掃 → 継手確認 → 適切な条件設定 → 溶接中の確認 → 溶接後の確認
という基本工程を積み重ねることが重要です。
また、求められる品質はすべての製品で同じではありません。
図面や仕様書に溶接方法、脚長、検査方法、品質基準などの指定がある場合は、製作前に確認する必要があります。
溶接・製缶加工をご相談ください
有限会社アラヤでは、鉄・ステンレス・アルミなどの溶接加工をご相談いただけます。
例えば、
- 架台やフレームを製作してほしい
- 図面指定の溶接箇所に合わせて製作してほしい
- 支給部品の溶接工程だけお願いしたい
- 一点物を製作してほしい
- 溶接部が割れた製品を修理したい
- 製品に合った溶接方法を相談したい
といった案件です。
お問い合わせの際は、
- 図面
- 材質
- 板厚
- 全体寸法
- 溶接箇所
- 必要な脚長や溶接指示
- 数量
- 使用用途
- 必要な検査
- 希望納期
などを分かる範囲でお知らせください。
図面がない場合でも、製品によっては写真や寸法入りのスケッチから検討できます。
「この溶接仕様で製作できますか?」という段階からご相談ください。

