SKD材の溶接は可能?割れ対策と施工ポイントを解説

SKD材(工具鋼)の溶接について|実際の持ち込み事例と注意点
「SKD材は溶接できますか?」
「金型の一部が欠けたので補修できませんか?」
このようなご相談をいただくことがあります。
SKD材は溶接できる場合がありますが、一般的な軟鋼と比べると割れや熱影響に注意が必要な材料です。
また、実際の持ち込み案件では、
「SKD材だとは分かっているけれど、SKD11なのかSKD61なのか分からない」
「熱処理や硬度までは分からない」
というケースも珍しくありません。
SKD材は鋼種・熱処理状態・硬度・製品形状などによって施工条件が変わるため、すべてを同じ条件で溶接できるわけではありません。
当社では、分かる範囲で材質や用途、製品の状態などを確認し、現物を見ながら対応可能か検討しています。
今回は、実際に持ち込まれた金型へのTIG溶接事例を交えながら、SKD材の溶接についてご紹介します。
■ SKD材とは
SKD材とは、金型や工具に使用される高硬度の合金工具鋼です。
代表的な材質👇
- SKD11(冷間ダイス鋼)
- SKD61(熱間ダイス鋼)
高い耐摩耗性と硬度を持つ一方で、
溶接には不向きな特性を持っています。
■ なぜSKD材は溶接が難しいのか
■ 焼入れ性が高い
SKD材は焼入れ性が非常に高く、
溶接時の熱で局所的に焼入れ状態になります。
■ 冷却時に割れやすい
溶接後の冷却時に、
急激な硬化と内部応力によって割れが発生しやすくなります。
👉 高硬度鋼は溶接時に割れが発生しやすい
■ 熱影響部(HAZ)の問題
溶接部周辺では硬さが大きく変化し、
強度や耐久性に影響を与えます。
👉 溶接熱により組織と硬さが変化する
■溶接時の対策
SKD材では予熱・冷却方法の検討が重要
SKD材は鋼種や熱処理状態によって、溶接時の熱の影響を受けやすい材料です。
そのため、溶接前に母材を予熱し、溶接部と周囲の急激な温度差を抑えながら施工する方法が取られます。
ただし、適切な予熱温度はSKD11・SKD61などの鋼種、硬度、熱処理状態、製品寸法、使用する溶接材料などによって異なります。
「SKD材なら○℃にすればよい」という一律の条件ではありません。
また、施工後の冷却方法や後熱についても、製品条件によって検討が必要です。
実際に持ち込まれた金型の溶接事例
溶接においては溶接方法を選ぶことが重要で通常TIG溶接やMIG溶接が用いられます。
溶接の温度なども重要になってくるので、SKDの特性を理解し、その特性を生かした適切な溶接技術を選択することが品質の高い溶接を実現するために必要になります。


今回は、金型を直接持ち込んでいただき、
「挟んである小さなブロックを金型本体へ溶接してほしい」
というご依頼でした。
小さいブロックについても本体と同じ材質として持ち込まれています。
ただし、
- SKD11・SKD61などの詳細な鋼種
- 熱処理状態
- 硬度
- 金型の詳しい用途
については確認できていません。
実際の持ち込み修理では、このように材質や熱処理の詳細資料が残っていないケースもあります。
分からない条件がある場合は、それを勝手に推測して施工条件を決めるのではなく、分かっている情報と現物の状態を確認しながら、対応できるかを検討することが重要です。
TIG溶接で施工


社長からしっかり指導してもらい、溶接開始です。

今回はTIG溶接で施工し、溶加材にはBKD-61Rを使用しました。
溶接前には母材を加熱してから施工しています。
ただし今回の予熱は温度計で数値管理したものではなく、経験に基づき母材の加熱状態を確認しながら行った施工です。
そのため、本記事では「○℃で施工すればよい」という施工条件としては紹介しません。
そして取れないように仮止めしていきます。


余熱をしっかりして適正温度で溶接しないと少し割れてしまったりするので、しっかりと温度管理もしないといけないです。
しっかり補修していきどんどん溶接していきます。


溶接しやすいように向きも変えつつ、強度を加えるためにも棒を入れて溶接していきます。
この時にアークを出しっぱなしにしてしまうと、熱を加えすぎてしまうため溶接に割れが生じることが多いです。
熱を集中させすぎないよう、連続して長くアークを出し続けるのではなく、母材の状態を確認しながら短い溶接を繰り返して施工しました。
万力を取って溶接していきます
外側の溶接が完了したので、万力を取って溶接していきます。

熱管理が大変な材質のため、再度余熱を与えていき、溶接していきます。
熱を与える箇所も一ヶ所のみではなく、溶接する周辺をまんべんなく熱していき、
全体的に熱を加えてムラがないようにしていきます。
今回のように詳細な材料情報が揃っていない持ち込み案件では、図面や施工要領だけですべてを判断できないこともあります。
母材への熱の入り方や溶接部の状態を見ながら施工するため、こうした案件では長年の経験による判断が必要になる場面があります。
一方で、材質・熱処理・硬度などの条件が指定されている製品については、その条件を確認したうえで施工方法を検討します。


上面から溶接していきます。
この時も先ほどと同じように、熱を与えすぎるとだめなのでアークも切りつつちょんちょん溶接しています。

最後に中の方も溶接していきます。
何度も言いますがSKDの溶接は熱管理が大切です。
難しいですが、そこを怠ると、溶接割れ(溶接不良)が発生してしまいます。
施工中にクラックを確認
溶接を進めていく中で、一部にクラックが発生していることを確認しました。
SKD材の溶接が難しいと言われる理由の一つが、この溶接割れです。
今回もそのまま完成とはせず、クラックが発生した部分を確認し、経験のある作業者が状態を見ながら手直しを行いました。
当時の補修方法について詳細な記録が残っていないため、本記事では具体的な補修手順までは記載しません。
この経験からも、SKD材では「溶接できたように見えるか」だけではなく、施工中・施工後にクラックが発生していないか確認することが重要だと感じています。
完成後は写真を撮る前にお客様に渡してしまっていました🙇♂️💦
このようなケースで対応可能
- 金型の欠け・摩耗
- 工具の補修
- 部品の再生
👉 状態に応じて最適な方法をご提案します
注意点(重要)
SKD材の溶接には制約があります。
- 完全な強度保証ができない場合がある
- 使用条件によって再発する可能性がある
- 状態によっては修理不可
👉 事前確認が非常に重要です
SKDの溶接はやはり難しい
SKD材は一般的な軟鋼に比べ、溶接条件の判断が難しい材料です。
当社では、材質や熱処理状態など分かる情報を確認し、現物の状態も見ながら対応可否を検討しています。
条件によっては溶接をおすすめできない、または対応できない場合もあります。
SKD材の詳細が分からなくても、まずはご相談ください
金型や工具の補修を検討していても、
「昔から使っている金型なので材質が分からない」
「SKDとは聞いているけれど、SKD11かSKD61か分からない」
「焼入れされているのか、硬度はいくつなのか分からない」
ということは珍しくありません。
詳細が分からないから問い合わせできない、ということではありません。
分かる範囲の情報と現物の状態を確認し、まず対応可能か検討します。
ただし、材質・熱処理状態・破損状況などによっては、施工できない場合や、溶接後の性能を保証できない場合があります。
また、当社で材質を分析・特定できるという意味ではありません。
まずは、
- 製品全体の写真
- 溶接・補修したい部分のアップ写真
- 分かれば材質
- おおよその寸法
- 使用用途
- 数量
- 分かれば硬度や熱処理情報
をお送りください。
有限会社アラヤは大阪市生野区の溶接工場です。現物をお持ち込みいただいてのご相談も可能です。
「これ、溶接で直せる?」
という段階からでも、一度ご相談ください。

