ステンレスと真鍮のろう付け事例|異種金属を接合する際のポイント

ステンレスと真鍮のろう付け

ステンレスと真鍮のろう付け事例|異種金属接合で重要な熱管理

今回は、ステンレスと真鍮をろう付けした異種金属接合の事例をご紹介します。

お客様から支給されたステンレスのフラットバーに穴があいており、そこへ段付き形状の真鍮ボスを差し込み、ろう付けで接合する製品です。

真鍮ボスは直径約φ40mm。

一度だけの仕事ではなく、現在も定期的に持ち込んでいただいている製品で、ロットによって数量は異なりますが、今回撮影した際は10個未満でした。

ステンレスと真鍮は材質の異なる異種金属です。

今回のような接合では母材同士を溶かして接合する溶融溶接ではなく、母材より融点の低いろう材を溶かして接合するろう付けを行っています。

特に施工時に重要になるのが、加熱しすぎず、かつ接合部へろうがきちんと回る温度まで持っていくことです。


今回のステンレスと真鍮のろう付け仕様

項目内容
製品用途詳細不明
母材①ステンレス製フラットバー(詳細鋼種未確認)
母材②真鍮製段付きボス(詳細材質未確認)
真鍮ボスサイズ約φ40mm
部品客先支給品
数量今回は10個未満・定期的に受注
接合方法ろう付け
ろう材当時選定・詳細銘柄は記録未確認
フラックスハンディーフラックス低温用
加熱酸素・アセチレン炎
前処理客先処理済み+当社でもクリーナー等で清掃
主な注意点加熱温度・ステンレス側の酸化
完成確認接合部へのろうの回り

※ステンレスについてはSUS304と思われますが、材質資料を確認できていないため、本記事ではSUS304とは断定していません。


ステンレスの穴へ真鍮ボスを差し込む構造

今回の製品は、ステンレスのフラットバーに加工された穴へ、段付き形状の真鍮ボスを差し込む構造になっています。

穴へ真鍮ボスをセットした状態で接合部を加熱し、ろう材を流して接合します。

ろう付けでは、溶接のように母材そのものを溶かして一体化するのではありません。

接合部を適切な温度まで加熱し、溶けたろう材が母材表面へぬれ、継手の隙間へ流れることで接合します。

ろう付けの基本的な仕組みについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。

ろう付けとは?溶接との違い・仕組み・メリットを解説


なぜステンレスと真鍮を溶接ではなくろう付けするのか

ステンレスと真鍮は、成分や性質の異なる金属です。

今回の製品では、母材同士を溶融させる溶接ではなく、ろう付けによって接合する仕様になっています。

ろう付けでは基本的に母材そのものを溶かさず、母材より低い温度で溶けるろう材を使用して接合できます。

異なる金属同士を接合する方法の一つとして用いられるのも、ろう付けの特徴です。

ただし、

「ステンレスと真鍮なら何でも同じ方法でろう付けできる」

というわけではありません。

母材の詳細な材質、形状、肉厚、継手構造、使用用途などによって、ろう材やフラックス、加熱方法を検討する必要があります。


ろう付け前に接合面を清掃

今回の部品は、お客様側でも接合面の処理をした状態で支給されています。

それでも当社では施工前に状態を確認し、必要に応じてクリーナーなどを使用して接合部を清掃してから施工します。

ろう付けでは、接合面の状態がろうのぬれや流れに影響します。

油分や汚れが残ったままでは、溶けたろう材が母材へ十分になじまない原因になります。

日本溶接協会も、フラックスには金属表面の酸化物を除去する働きがある一方、油脂類や厚い汚れまで除去するものではないため、ろう付け前の前処理が必要だと説明しています。

す。


フラックスを塗布して酸化を抑える

接合面を整えたら、ろう付け用のフラックスを使用します。

今回使用しているのは、

ハンディーフラックス低温用

です。

フラックスには、加熱時に生じる酸化物を除去し、接合面の再酸化を抑え、溶けたろう材が母材へぬれやすい状態をつくる役割があります。

特にステンレスではこの工程が重要です。

ステンレスの耐食性を生み出している表面の不動態皮膜にはクロム酸化物が含まれ、この酸化皮膜はろう材のぬれを妨げます。

そのため、ステンレスのろう付けでは適切なフラックスを使用しながら施工します。


酸素・アセチレン炎で接合部を加熱

フラックスを塗布したら、酸素とアセチレンを使用して接合部を加熱していきます。

今回の施工で特に経験が必要になるのが、この加熱工程です。

ただ熱くすればいいわけではありません。

接合部全体をろう材が流れる状態まで加熱する必要がある一方で、必要以上に加熱すると母材表面の酸化が進んでしまいます。

特にステンレスについて日本溶接協会は、ガスろう付けでは局部過熱が起こりやすく、過熱によって厚いクロム酸化皮膜ができると、フラックスだけでは除去しにくくなるとしています。

そのため今回のような作業では、

温度を上げること

だけではなく、

上げすぎないこと

も重要です。


ステンレスと真鍮のろう付けで難しいのは「熱の合わせ方」

今回の施工を担当する職人に聞くと、ステンレスと真鍮のろう付けで特に気を使うのは熱の管理です。

異なる金属を一つの継手として加熱するため、炎の当て方や位置を調整しながら、接合部全体を適切な状態へ持っていく必要があります。

片側だけを加熱しすぎても、反対に加熱が不足しても、ろう材が狙った場所へきれいに回らないことがあります。

Copper Development Associationのろう付け資料でも、ろう材が継手へ入らず外側へ流れてしまう場合は、一方が過熱されているか、もう一方の加熱が不足している可能性があるとされています。

つまり、

炎を当てる

温度を上げる

ろうを溶かす

だけの作業ではありません。

母材の状態、フラックスの変化、加熱されている位置、ろう材の流れ方を見ながら炎を動かすことが必要になります。

見た目にはシンプルな作業でも、毎回同じようにろうを回すには経験が必要になる工程です。


必要以上にステンレスを酸化させない

今回、施工するうえでもう一つ意識しているのが、ステンレス側を必要以上に酸化させないことです。

加熱時間が長くなったり、一部分へ熱を集中させすぎたりすると、ステンレス表面の酸化が進みます。

日本溶接協会も、ステンレスを銀ろうでガスろう付けする場合には、低温で活性の良いフラックスを使用し、必要以上に時間をかけず施工することをポイントとして挙げています。

今回も、温度計で「○℃」と数値管理して施工しているわけではありません。

職人が部品・フラックス・ろうの状態を見ながら、加熱の仕方を調整しています。

そのため、このページでは、

ステンレスと真鍮は○℃でろう付けすればよい

という具体的な温度は書きません。

使用するろう材や母材条件によって適切な温度域が変わるためです。銀ろう自体も種類によって溶融温度が異なります。

これはかなり大事です。


ろう材が接合部へ回っているかを確認

接合部が適切な状態になったところで、ろう材を流していきます。

今回、施工後に主に確認しているのが、

ろう材が接合部へきちんと回っているか

です。

表面の一部分にろうが付いているだけではなく、段付きボスとステンレスフラットバーの接合部へろうが回っている状態を確認します。

ステンレスと真鍮のろう付け

今回の製品は定期的にご依頼いただいているため、同様の工程を繰り返し施工しています。

ただし慣れている製品でも、加熱状態やろうの流れを確認しながら一つずつ作業しています。


ステンレスと真鍮以外の異種金属ろう付けにも対応

有限会社アラヤでは、今回のステンレスと真鍮だけでなく、これまでにもさまざまなろう付け加工を行っています。

例えば、

  • ステンレス
  • 真鍮
  • 砲金
  • 超硬部品

などのろう付け実績があります。

ただし、これらの材質であればどの組み合わせでも必ず接合できるという意味ではありません。

材質の組み合わせ、形状、使用用途、必要強度、隙間などを確認したうえで、対応可能か検討します。

超硬リングのろう付け加工事例

SUS630とSUS304のろう付けは可能?難易度・方法・事例を解説

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支給部品のろう付け工程だけでもご相談ください

今回のように、

部品そのものはお客様から支給いただき、当社ではろう付け工程だけを担当する

というご依頼にも対応しています。

「ステンレスと真鍮を接合したい」

「異なる金属同士を接合できるか分からない」

「部品は用意できているので、ろう付けだけお願いしたい」

「数個だけ定期的に加工してほしい」

「溶接では難しい部品を接合したい」

といった場合もご相談ください。

お問い合わせの際は、可能であれば、

  • 接合したい2つの材質
  • 部品全体の写真
  • 接合部分のアップ写真
  • 図面や寸法
  • 数量
  • 使用用途
  • 希望納期

などをお知らせください。

材質の詳細が分からない場合でも、分かる範囲の情報からまず対応可能か確認します。

ただし、当社で未知の材質を分析・特定できるという意味ではありません。

「この材料とこの材料、ろう付けできますか?」という段階からお気軽にご相談ください。

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